生態情報開発学分野
Laboratory of Ecological Information
京都大学 大学院農学研究科 地域環境科学専攻
Graduate School of Agriculture, Kyoto University

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研究テーマ

植食性のダニの一部は,その高い適応能力を遺憾なく発揮して野菜や果樹,茶,花卉など多くの農作物を加害し,最も防除が困難な農業害虫の一つになっています。しかし,「農薬を撒かなければダニは増えない」という意見もしばしば耳にします。たしかに,自然生態系では植食性のダニ類や昆虫類の特定の種が大発生することは,通常はあまりありません。そこでは,天敵などの作用により,特定の植食者が大発生するのを抑制する力(環境圧)が働いていると考えられます。一方,植物もただ黙ってダニや昆虫に食べられているわけではありません。よく調べてみると,植物は捕食者に代わりの餌や隠れ家を提供することによって植食者から身を守ってもらったり,植食者にダメージを与える防御物質を作り出したりして色々な方法で対抗しています。植食者たちはこのような植物の対抗手段をうまく潜り抜けようとし,その相互作用が直接あるいは間接的な種間関係に影響を及ぼしてさまざまな進化が起こります。

環境に負担を掛けずに農作物の害虫管理を行うためには,自然・農業生態系におけるこのような種間関係をより良く理解し,活用することが必要です。当分野では植食性のダニ類や昆虫類を研究材料として,自然界や農地における生態の解明をはじめとして,植物と植食者,天敵の間における相互作用や遺伝的変異などに関するさまざまな基礎研究や応用研究を行っています。

植物ー植食者の相互作用に関する進化生態学的研究

  • 植食者が決まった植物だけを選り好みする理由
  • 寄生性の分化と広い食性幅を維持する機構

植物と植食者の多様な「食う-食われる」関係は、食害を妨げる植物の防衛機構とそれを乗り越えようとする植食者の軍拡競争を通じて進化してきたと考えられています。この視点から、植食性昆虫やハダニが決まった植物だけを選り好みする理由や同じ植物を利用できるハダニとできないハダニがいる理由などについて検討しています。

適応形質の変異に関する比較研究

  • 休眠性や食性
  • 移動性などの適応形質にみられる変異とそれを生じた淘汰圧

農作物の害虫として知られるハダニ類は、その高い増殖力や短い世代時間のゆえに優れた実験生物です。ハダニ類は多様な環境にすみ、休眠性や食性、移動性などの適応形質に大きな変異を持っています。これらの変異を種間・種内で比較し、それを生じさせた淘汰圧を明らかにするための実証・理論的研究を行っています。

薬剤抵抗性の発達に関する集団遺伝学的研究

  • 遺伝子交流の制約が薬剤抵抗性の発達過程に及ぼす影響

体サイズの小さいハダニは、実験生物として優れる一方で野外では観察や個体追跡が難しいという難点があります。そこで、DNA多型などの遺伝的マーカーを用いて個体間の血縁関係や個体群間の遺伝子交流を推定することによって、同所的種分化、性選択、メタ個体群動態など進化生物学の最新トピックを定量的に扱おうとしています。

害虫の発生動態と制御に関する応用研究

  • 農地における害虫の発生動態と多発要因
  • 天敵の個体群動態と利用技術

栽培環境の異なる果樹園などでハダニ類の発生動態を比較し、ハダニの多発をもたらす要因を明らかにする一方で、捕食性カブリダニなどの生物天敵を増殖・放飼してハダニ個体群を制御するための技術開発をしています。

構成員

(2017年1月現在)

教授天野洋753-6135
准教授刑部正博753-2267
助教矢野修一753-6144
事務補佐員中西智子753-6135
学振特別研究員2名
大学院生と4回生11名