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実験室(2)に集結する分子生物学的実験用の機器
実験室(2)に集結する分子生物学的実験用の機器
巧みな腕さばき
巧みな腕さばき
お好み焼きで鍛えました!
お好み焼きで鍛えました!

恒温室(1)のカブリダニ類からハダニ類を隔離して飼育しています。植物育成用ライトでハダニの餌にするインゲンマメも育てています。
恒温室(1)のカブリダニ類からハダニ類を隔離して飼育しています。植物育成用ライトでハダニの餌にするインゲンマメも育てています。
防御網の下に卵を産むカンザワハダニ雌成虫
防御網の下に卵を産むカンザワハダニ雌成虫「あなたは死なないわ。私が守るもの」
共通の天敵に立ち向かうために協力するナミハダニ(緑色)とカンザワハダニ(赤色)
共通の天敵に立ち向かうために協力するナミハダニ(緑色)とカンザワハダニ(赤色)「一人ぼっちは寂しいもんな‥。いいよ。一緒にいてやるよ」「もう何も怖くない。私、一人ぼっちじゃないもの!」
カンザワハダニ雌成虫(左)とその脱皮殻(右)。
カンザワハダニ雌成虫(左)とその脱皮殻(右)。「そっちはさやかじゃなくてただの抜け殻なんだって」
ハダニを閉じ込めて飼育・観察するためのリーフディスク
ハダニを閉じ込めて飼育・観察するためのリーフディスク「実験!?」「外からの影響力が一切及ばない環境に閉じ込めた時何が起こるのか‥たしかに興味深い結果を観察させてもらったよ」
突然の豪雨でも、水に強い静止期のハダニなら大丈夫
「キャー!何よ、あの天気予報は!」突然の豪雨でも、水に強い静止期のハダニなら大丈夫
静止期の雌を交尾前ガードするナミハダニ雄成虫(左下)。周囲には他の雌も(中央、右下)。
静止期の雌を交尾前ガードするナミハダニ雄成虫(左下)。周囲には他の雌も(中央、右下)。「こんなに大勢のハダニと一緒にいるのにたった一人を独占したくなるのは何でなんだろうな」

ハダニの骸から成長した菌糸は、
ハダニの骸から成長した菌糸は、
やがて葉全体を覆い尽くします。
やがて葉全体を覆い尽くします。「そうか。腐海に飲まれたか」(くだらないこと言ってないで早く葉を交換して下さい)

ヤブガラシに寄生するワタアブラムシ
ヤブガラシに寄生するワタアブラムシ「ピッピカチュウ!」(似てないって?)
粘着トラップで実験室に湧くハエ退治
粘着トラップで実験室に湧くハエ退治「見ろ。ハエがごみのようだ」
「先生今日も水撒きですか?」
「先生今日も水撒きですか?」「俺はここで水を撒くことしかできない。だが君には君にしかできない、君にならできることがあるはずだ」

恒温室(1)では、日長と温度を24hコンピューター制御した環境でカブリダニ等の捕食者を飼育しています。
恒温室(1)では、日長と温度を24hコンピューター制御した環境でカブリダニ等の捕食者を飼育しています。
アリの飼育装置。働きアリは園庭ロボットのように、
アリの飼育装置。働きアリは園庭ロボットのように、最後の1匹が命尽きるまで王族のいない住居を守り続けます。
アリの脱出を防ぐ為に、透明ケースの壁にタルク粉を塗ります。
アリの脱出を防ぐ為に、透明ケースの壁にタルク粉を塗ります。 「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」
アリとハダニの体格差は歴然。アリにとってハダニはひと口サイズのおやつ
アリとハダニの体格差は歴然。アリにとってハダニはひと口サイズのおやつ「戦闘力‥たったの5か‥ゴミが」「じ‥冗談じゃねえ!こんなバケモノ!!」
水を撒き過ぎてアリ飼育ケースにキノコ発生
水を撒き過ぎてアリ飼育ケースにキノコ発生「やったね。ひさびさの真水だ」
驚異的走力のコウズケカブリダニ。人間サイズなら100mを2秒台で走ります。
驚異的走力のコウズケカブリダニ。人間サイズなら100mを2秒台で走ります。「おれの動きは人間ではとらえることができん」
肉食時には豹変して被食者の体液の色に染まります。
肉食時には豹変して被食者の体液の色に染まります。 「てめえらの血は何色だっ!」
成虫化直後のスリムなケナガカブリダニの雌(左図)は、加齢と過食によって肥満体型になります(右図)。
成虫化直後のスリムなケナガカブリダニの雌(左図)は、加齢と過食によって肥満体型になります(右図)。「あの子も‥ママみたいになるの?」「生きるってことは、変わるってことさ」

母親が残した網に守られるハダニの幼若虫。
母親が残した網に守られるハダニの幼若虫。
網が邪魔で目前のハダニ卵と幼虫に手を出せないコウズケカブリダニ
網が邪魔で目前のハダニ卵と幼虫に手を出せないコウズケカブリダニ「私を護っていてくれてる!‥ずっと、ずっと一緒だったのね!ママッ!」

ハダニの防御網に侵入するケナガカブリダニ(中央橙色)
ハダニの防御網に侵入するケナガカブリダニ(中央橙色)「使徒、セントラルドグマに侵入!」「防御網が効きません」「コウズケとは違うのだよ、コウズケとは!」

多数の実体顕微鏡が配備され、隣接する恒温室(1)~(3)で飼育するダニ類を飼育容器ごと持ち出して作業します。
多数の実体顕微鏡が配備され、隣接する恒温室(1)~(3)で飼育するダニ類を飼育容器ごと持ち出して作業します。
専用電源に接続された人工気象器群。扉の中は別々の季節。
専用電源に接続された人工気象器群。扉の中は別々の季節。
ナミハダニの世代時間はわずか10日。神になった気分でハダニを進化させる選抜実験。
ナミハダニの世代時間はわずか10日。神になった気分でハダニを進化させる選抜実験。「時計の針は元には戻らない。だが、自らの手で進めることはできる」
BGMを聴きながらいつもの作業。
BGMを聴きながらいつもの作業。「歌は心を潤してくれる。リリンが生み出した文化の極みだよ」
コンタミ防止のため、実験用具(上)を高温で滅菌。
コンタミ防止のため、実験用具(上)を高温で滅菌。「汚物は消毒だ~」
吐糸を足掛かりにして、天まで続くハダニの通路が出現!
吐糸を足掛かりにして、天まで続くハダニの通路が出現!「あの塔まで行くんだ」「塔って、ユニオンの塔?」
風分散するために餌植物の先端に集まるハダニ。でも無風の実験室では
風分散するために餌植物の先端に集まるハダニ。でも無風の実験室では 「飛べねえダニはただのダニ」
紫外線の照射実験。防護眼鏡等をしないと…
紫外線の照射実験。防護眼鏡等をしないと…「目が~目が~」
実験失敗&仮説崩壊
実験失敗&仮説崩壊「短けえ夢だったな…」
雑食性カブリダニの餌は凍結花粉。解凍時間を誤ると花粉が吸湿して劣化します。
雑食性カブリダニの餌は凍結花粉。解凍時間を誤ると花粉が吸湿して劣化します。「腐ってやがる。早すぎたんだ」

当分野に興味のある方は、お気軽にご連絡ください。

京都大学大学院農学研究科 地域環境科学専攻 生態情報開発学分野
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
Tel&FAX: 075-753-6135 (日本&中西 共用)
E-mail: hinomotonorihide-lab@yahoo.co.jp
(メールチェックの頻度は低いので、お急ぎの方や本学の学生の方は、大学のアドレスにお送りいただいたほうが確実です。教育研究活動データベースに載っています。)
URL: http://www.eco-inf.kais.kyoto-u.ac.jp/

研究室の場所

吉田キャンパス北部構内の農学部総合館南棟5階にあります。
農学部総合館の南西側は4階までしかありませんので気をつけてください。南側中央のエレベータ/階段が便利です。

研究室の場所

研究室の配置

農学部総合館へのアクセスは、農学研究科のウェブサイトを御覧ください。

https://www.kais.kyoto-u.ac.jp/japanese/access/

教員による関連の総説・解説や書籍を紹介します。分野の研究内容を概観するのに役立つかもしれません。

総説

Schausberger P, Yano S, Sato Y (2021) Cooperative Behaviors in Group-Living Spider Mites. Frontiers in Ecology and Evolution 9:750. https://doi.org/10.3389/fevo.2021.745036
Osakabe M (2021) Biological impact of ultraviolet-B radiation on spider mites and its application in integrated pest management. Appl Entomol Zool 56: 139-155. https://doi.org/10.1007/s13355-020-00719-1
刑部正博 (2020) ナミハダニの殺ダニ剤抵抗性. 現状と有効な抵抗性管理手法. グリーンレポート612: 14-15
大槻初音, 矢野修一 (2020) ハダニからみた捕食性カブリダニ類のステルス性. 植物防疫 74:63–67
日本典秀, 安居拓恵, 辻井直, 安田哲也, 前田太郎, 趙鉄軍, 中野明正 (2020) 植物工場トマトにおけるタバコカスミカメを利用した害虫防除の試み. 植物防疫 74:24–29
日本典秀, 岩本健太郎 (2020) 土耕長期越冬作型におけるタバコカスミカメを中心とした害虫防除体系. 植物防疫 74:18–23
刑部正博 (2019) UV-B照射によるハダニ類の防除メカニズムと環境要因. 植物防疫 73: 675–679
刑部 正博 (2019) ナミハダニのエトキサゾール抵抗性と診断法. 植物防疫 73:357–362
田中雅也, 八瀬順也, 神頭武嗣, 刑部正博 (2017) UVB ランプと光反射シートによるハダニ物理的防除(UV 法)について―施設イチゴにおける防除事例を中心に. 植物防疫 71:229–234
村田 康允, 刑部 正博 (2014) ハダニに対するUVBの致死効果と光回復. 植物防疫 68:539–543
刑部正博 (2016) フィールド&ラボ~知って得する豆知識③~簡単,便利~ハダニ採集用小型吸虫管. 植物防疫 70: 126–128
刑部正博 (2015) ゲノム解析による殺ダニ剤抵抗性研究の発展. 農業および園芸 90: 572–580
村田康允, 刑部正博 (2014) ハダニに対するUVBによる致死効果と光回復. 植物防疫 68: 539–543
増井伸一, 片井祐介, 山田真, 青木慎一, 桜井尚史, 刑部正博 (2014) 温室メロンにおけるUV-B照射によるハダニ防除の効果と実用化のための課題. 植物防疫 68: 544–548
有本誠, 佐藤雅, 上杉龍士, 刑部正博 (2014) 輸入植物検疫で発見されるTetranychus属ハダニ類のPCR-RFLPによる識別法. 植物防疫 68: 66–70
日本典秀, 檜垣智美, 前田太郎, 長森茂之, 富所康広 (2011) マイクロサテライトDNAマーカーを利用した天敵評価. 植物防疫 65:274–279
矢野修一, 小澤真由子, 刑部正博, 川崎倫久 (2009) カブリダニ類の定着促進技術の生態学的背景.-生物的防除の新しい方向性を目指して-. 植物防疫 63: 635–640
刑部正博, 大塚恵子 (2009) 植物ダニと紫外線:ナミハダニはなぜ葉裏にいるのか?. 植物防疫 63: 583–586
刑部正博, 上杉龍士 (2009) ハダニ類の薬剤抵抗性(解説). 日本農薬学会誌 34: 207–214
刑部正博, 小川友佳 (2009) 人工飼料の新たな利用の可能性と問題点-ミヤコカブリダニの長期的維持-. 植物防疫 63: 44–48
日本典秀 (2009) ゲノム研究と天敵利用. 植物防疫 63:473–476
井上栄明, 福田健, 柿元一樹, 柏尾具俊, 平野耕治, 日本典秀, 野田隆志 (2008) ブースター天敵を用いた難防除施設園芸害虫の生物的防除技術. 植物防疫 62:601–606
刑部正博, 森本健二, 本郷公子, 舟山健, 大隈専一 (2007) 吐糸を介したハダニの種間関係. 植物防疫 61: 268–272
柿元一樹, 井上栄明, 野田隆志, 日本典秀, 柏尾具俊, 平野耕治, 山口晃一, 岡島秀治 (2006) ブースター天敵を用いたアザミウマ類の新生物的防除技術めざして. 農業および園芸 81:371–379

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天敵」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 人間の日常生活では、苦手な人・嫌な人を指すことが多いと思います。農業害虫の防除の世界では、害虫を殺す虫や病原菌を「天敵」と言います。生物学的には、捕食性天敵・捕食寄生性天敵・病原体になります。

アザミウマを食べるヒメハナカメムシの幼虫

農業は食料生産のためにあります。増え続ける世界人口を支えるには、生産量を増やさねばなりません。また、先進国では、高品質や安全・安心な農産物も求められています。しかし、農作物は常に害虫・病気・雑草などに侵され減収の危険にさらされています。生産者は、そのため、化学合成農薬によってそれらを防除しています。化学合成農薬を用いない場合、農作物の収量は3-9割も減るという調査報告もあります。

タバコカスミカメ

しかし、害虫も進化します。農薬に対する抵抗性を発達させて、新たに開発される殺虫剤に対しても次々と抵抗性を発達させて、防除が困難になってきています。また、ミツバチやマルハナバチなどの受粉昆虫の利用も、殺虫剤の利用を躊躇する要因です。そしてなによりも、暑い真夏のハウスの中で、カッパを着て完全武装で農薬散布する重労働は、農家にとって大きな負担です。このため、化学合成農薬以外の手段も適切に組み合わせて病害虫を防除する 総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management:IPM) の実践が求められています。その主役と目されているのが天敵です。

ヒメカメノコテントウ

ビニルハウスなどの施設栽培では、主要な害虫に対する天敵昆虫・ダニ類が市販され、天敵資材のレパートリーが揃ってきました。しかし、どんなタイミングで利用するればよいのか、どんな環境でパフォーマンスが良い/悪いのか、複数の害虫に対応するにはどうしたらよいのか、まだまだ不明な点があります。これらを解明して、より良い利用法を提唱するのが私達の役目です。

ヒラタアブ

また、野外の露地栽培では、気象に左右されるため、さらに複雑です。商業的に入手できる天敵資材の利用は限られます。しかし、野外には土着天敵と呼ばれる天敵の野外個体群がいます。これらを有効に活用するため、天敵温存植物を用いた保護・強化をはかる取り組みが進められています。科学的に実証するには、天敵がいつ・どこから来るか、何を食べているか、知る必要があります。そのためには、個体レベルの行動解析から、ランドスケープレベルの多様性研究までが求められています。

ナミテントウ

本研究分野でも、これらの課題は着手したばかりです。みなさんも、一緒にこれらの課題に取り組みませんか?

生態学で説明できると思われる問いの例です。気になりませんか・・?

  • 自転車を盗まれないための鉄則は?
  • スポーツ選手の肉体や洗練されたメカは何故美しいか?
  • 人は何故決まった雑誌を読むのだろうか?
  • 結婚相手に望む条件が男女で違う理由は?
  • 居酒屋で女性グループだけに割り引きがあるのは何故か?
  • 赤ん坊が「お父さんにそっくり」と言われるのは何故か?
  • 何故お年玉の習慣があるのか?

注:これらは私たちの研究対象ではなく「酒の肴」です。念のため。

生物の形質には、制約や偶然で説明される「つまらない」部分と、自然選択で造られた「面白い」部分とがあります。ですから同じ現象は2通りに説明できます。例えば、

  1. 「ハツカダイコンはアオムシにかじられましたが、走って逃げませんでした。これは『植物』という系統の制約のためです。」→正しいけどつまらない説明
  2. 「ハツカダイコンはアオムシにかじられましたが、その刺激に反応して防衛化学物質を誘導し、食害を防ぎました。」→植物の「賢さ」を見抜いた面白い説明

などです。

私たち生態学者が研究人生を賭けるのは(2)の説明、つまり自然選択によって造られた機能的な形質を説明することです。自然選択にデザインされた生存機械である生物や、それらが構成する生態系の構造は、最高の機能美を持ちます。機械の性能を熟知した人だけがその真の美しさに気付くように、生物の形態や行動の機能を理解すれば、自然の美しさの必然性に気付きます。生態学を学んだあなたには世界が違った姿に映るはずです。

普遍的な自然選択の力は、ハダニのような微細な生物にまで及ぶので(神は細部に宿るのです)、逆にこの細部を研究することから、マクロな世界を創造する普遍的な仕組みを演繹することができるのです。ダニや昆虫たちの行動が人間に重なって見えるのは、決して偶然ではありません。生態学は、人間の行動や社会に関する多くの問い(例はこちら)に対しても有力な説明を提供してくれます。その説明力はあらゆる宗教・哲学の説明力を凌駕すると私たちは考えます。生態学を学んだあなたには「悟り」が開けるはずです。

総合学問である生態学には、関連する多くの知識が要求されます。ちなみに「生態学」の教科書 (Begon, Harper and Townsend 著、堀道雄監訳) は1300頁という絶望的な厚みがあります(ただし個人が卒論や修論で直接関わる部分は数十頁程度ですからご安心を)。調査や実験、解析、研究発表のためにはさらに多くの知識が必要なのは言うまでもありません。しかし、そうしたマニュアル化できる知識は研究を進めるための「手段」にすぎません。生態学を研究する上で本当に大きく物を言いうのは、検証に値する仮説をつくるセンスと、必要な研究手法を開発する創意工夫です。これが生態学を研究することの魅力であり怖さでもあります。一山当てたいあなたには、生態学がお薦めです。