Pages





























当分野に興味のある方は、お気軽にご連絡ください。
京都大学大学院農学研究科 地域環境科学専攻 生態情報開発学分野
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
Tel&FAX: 075-753-6135 (日本&中西 共用)
E-mail: hinomotonorihide-lab@yahoo.co.jp
(メールチェックの頻度は低いので、お急ぎの方や本学の学生の方は、大学のアドレスにお送りいただいたほうが確実です。教育研究活動データベースに載っています。)
URL: http://www.eco-inf.kais.kyoto-u.ac.jp/
研究室の場所
吉田キャンパス北部構内の農学部総合館南棟5階にあります。
農学部総合館の南西側は4階までしかありませんので気をつけてください。南側中央のエレベータ/階段が便利です。
農学部総合館へのアクセスは、農学研究科のウェブサイトを御覧ください。
教員による関連の総説・解説や書籍を紹介します。分野の研究内容を概観するのに役立つかもしれません。
総説


「天敵」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 人間の日常生活では、苦手な人・嫌な人を指すことが多いと思います。農業害虫の防除の世界では、害虫を殺す虫や病原菌を「天敵」と言います。生物学的には、捕食性天敵・捕食寄生性天敵・病原体になります。
農業は食料生産のためにあります。増え続ける世界人口を支えるには、生産量を増やさねばなりません。また、先進国では、高品質や安全・安心な農産物も求められています。しかし、農作物は常に害虫・病気・雑草などに侵され減収の危険にさらされています。生産者は、そのため、化学合成農薬によってそれらを防除しています。化学合成農薬を用いない場合、農作物の収量は3-9割も減るという調査報告もあります。
しかし、害虫も進化します。農薬に対する抵抗性を発達させて、新たに開発される殺虫剤に対しても次々と抵抗性を発達させて、防除が困難になってきています。また、ミツバチやマルハナバチなどの受粉昆虫の利用も、殺虫剤の利用を躊躇する要因です。そしてなによりも、暑い真夏のハウスの中で、カッパを着て完全武装で農薬散布する重労働は、農家にとって大きな負担です。このため、化学合成農薬以外の手段も適切に組み合わせて病害虫を防除する 総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management:IPM) の実践が求められています。その主役と目されているのが天敵です。
ビニルハウスなどの施設栽培では、主要な害虫に対する天敵昆虫・ダニ類が市販され、天敵資材のレパートリーが揃ってきました。しかし、どんなタイミングで利用するればよいのか、どんな環境でパフォーマンスが良い/悪いのか、複数の害虫に対応するにはどうしたらよいのか、まだまだ不明な点があります。これらを解明して、より良い利用法を提唱するのが私達の役目です。
また、野外の露地栽培では、気象に左右されるため、さらに複雑です。商業的に入手できる天敵資材の利用は限られます。しかし、野外には土着天敵と呼ばれる天敵の野外個体群がいます。これらを有効に活用するため、天敵温存植物を用いた保護・強化をはかる取り組みが進められています。科学的に実証するには、天敵がいつ・どこから来るか、何を食べているか、知る必要があります。そのためには、個体レベルの行動解析から、ランドスケープレベルの多様性研究までが求められています。
本研究分野でも、これらの課題は着手したばかりです。みなさんも、一緒にこれらの課題に取り組みませんか?
生態学で説明できると思われる問いの例です。気になりませんか・・?
- 自転車を盗まれないための鉄則は?
- スポーツ選手の肉体や洗練されたメカは何故美しいか?
- 人は何故決まった雑誌を読むのだろうか?
- 結婚相手に望む条件が男女で違う理由は?
- 居酒屋で女性グループだけに割り引きがあるのは何故か?
- 赤ん坊が「お父さんにそっくり」と言われるのは何故か?
- 何故お年玉の習慣があるのか?
注:これらは私たちの研究対象ではなく「酒の肴」です。念のため。
生物の形質には、制約や偶然で説明される「つまらない」部分と、自然選択で造られた「面白い」部分とがあります。ですから同じ現象は2通りに説明できます。例えば、
- 「ハツカダイコンはアオムシにかじられましたが、走って逃げませんでした。これは『植物』という系統の制約のためです。」→正しいけどつまらない説明
- 「ハツカダイコンはアオムシにかじられましたが、その刺激に反応して防衛化学物質を誘導し、食害を防ぎました。」→植物の「賢さ」を見抜いた面白い説明
などです。
私たち生態学者が研究人生を賭けるのは(2)の説明、つまり自然選択によって造られた機能的な形質を説明することです。自然選択にデザインされた生存機械である生物や、それらが構成する生態系の構造は、最高の機能美を持ちます。機械の性能を熟知した人だけがその真の美しさに気付くように、生物の形態や行動の機能を理解すれば、自然の美しさの必然性に気付きます。生態学を学んだあなたには世界が違った姿に映るはずです。
普遍的な自然選択の力は、ハダニのような微細な生物にまで及ぶので(神は細部に宿るのです)、逆にこの細部を研究することから、マクロな世界を創造する普遍的な仕組みを演繹することができるのです。ダニや昆虫たちの行動が人間に重なって見えるのは、決して偶然ではありません。生態学は、人間の行動や社会に関する多くの問い(例はこちら)に対しても有力な説明を提供してくれます。その説明力はあらゆる宗教・哲学の説明力を凌駕すると私たちは考えます。生態学を学んだあなたには「悟り」が開けるはずです。
総合学問である生態学には、関連する多くの知識が要求されます。ちなみに「生態学」の教科書 (Begon, Harper and Townsend 著、堀道雄監訳) は1300頁という絶望的な厚みがあります(ただし個人が卒論や修論で直接関わる部分は数十頁程度ですからご安心を)。調査や実験、解析、研究発表のためにはさらに多くの知識が必要なのは言うまでもありません。しかし、そうしたマニュアル化できる知識は研究を進めるための「手段」にすぎません。生態学を研究する上で本当に大きく物を言いうのは、検証に値する仮説をつくるセンスと、必要な研究手法を開発する創意工夫です。これが生態学を研究することの魅力であり怖さでもあります。一山当てたいあなたには、生態学がお薦めです。