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研究のスタイル

研究分野は?
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名前のとおり、生態学をベースとしています。行動/進化生態学、個体群/群集生態学、分子生態学、集団遺伝学、応用昆虫学、害虫管理学などを扱います。

材料は?
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ダニ類と昆虫類を扱います。つまり理屈の上では全生物種の大半をカバーすることになります。しかし、科学研究の目的は普遍的な仮説を導いて検証することであって、珍種を採集することではありません。だから同じテーマを研究するなら、集め易く、飼い易い材料を使う方が便利に決まっています。ハダニを使う人が多いのはそのためです。「誰でも知っている虫を使って誰も知らないことを明らかにする」ことが私たちの理想です。

しかし、農業生態系には多種多様な節足動物が存在します。私たちが目指す減農薬の農業体系が一般化してくると、なおさらです。そのため、その他の害虫、天敵も扱います。現在研究対象となっているのは、以下の昆虫・ダニ類です。

  • 害虫:ハダニ、コナガ、アザミウマ、アブラムシ、ミバエ
  • 天敵:カブリダニ、捕食性カメムシ、捕食性アザミウマ、捕食性テントウムシ、ヒラタアブ

とはいっても基本的には「どんな材料でも」相談に乗ります。

個人研究かチーム研究か?
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個人ごとに研究テーマを持ちます。研究室の共通テーマを分担するのではありません。論文や学会発表で先生と共著の形になっても、本人のプライオリティーは保証されます。生態情報開発学分野では、個人主義と学問の自由を重んじる気風が守られています。独りで考えて行動できるタイプの人には特にお薦めです。

実証研究か理論研究か?
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実証研究が中心です。ハダニを第二のショウジョウバエにすることが私たちの夢です。

帰納法か仮説演繹法か?
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どちらもやります。体力と根気のある人にはシラミつぶしにデータを取る帰納法が使えます。さらに根性がつくことでしょう。謎解きが好きな人には仮説演繹法(仮説から導かれる推論とデータを照らし合わせて仮説の真偽を確かめる方法)がお薦めです。ありあわせの材料と手法で課題を解決する快感はくせになります。

室内か野外か?
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どちらもできます。微小な害虫や天敵類を扱うため、肉眼で観察するのが難しく、直接観察や操作実験は実験室でします。実験室にはエアコンと人工照明で環境を制御した恒温室があり、何十万匹というハダニやアザミウマ、アブラムシを一年中飼育しています。実験装置の工夫が研究を大きく左右します。NHK教育の「できるかな」が好きだった人にはぴったりです。

一方、野外調査は個体数の調査とサンプルの採集が中心になります。野外から採集してきたサンプルからDNAを抽出して遺伝構造の解析を行ったりもします。府県などの研究機関にお願いして共同研究をして、実際の圃場での研究も実施します。野生植物で調査するのなら大学近辺でも十分にできます。太陽の下で生物の営みを観察するのが好きな人にはオススメです。

要するに「どこでも」調査できます。

基礎研究か応用研究か?
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「生態情報開発学って何?」で説明したように、基礎と応用は車の両輪です。それぞれのメンバーは、基礎寄りだったり応用寄りだったりしますが、決して基礎だけ、応用だけの考えしか無いようなことのないように希望します。基礎から応用を繋ぐのは、農学部/農学研究科に課せられたミッションでもあります。

どんな応用?
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これまでの害虫防除は、化学合成農薬に頼り切った体系が主流でした。しかし、環境や人体への影響、散布労力、害虫の薬剤抵抗性の発達により、限界に来ています。そこで、現在では総合的病害虫・雑草管理(Integrated Pest Management:IPM) という考え方が主流になっています。そこでは、化学的防除(化学農薬)だけではなく、物理的防除(防虫ネットなど)や耕種的防除(耐性品種など)を組み合わせた防除体系を構築しますが、天敵を用いた生物的防除はまだまだ研究の余地があり、当分野での研究対象として重要視しています。

天敵と害虫の食うもの−食われるものの関係は、まさに生態学をベースとした当分野にぴったりの研究対象です。