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ハダニの魅力とは?

「昆虫少年」「虫愛づる姫君」にはお目にかかれても「ハダニおたく」を見ることはまずありません。いくらハダニが重要害虫だと聞かされても、興味を感じないのが普通の感覚ですよね。でもちょっと待って! ハダニが害虫であることには理由があります。そしてその理由こそが、私たちがハダニを材料に選んでいる理由でもあるんです。

カンザワハダニ
ハダニが害虫である理由とは・・

  1. 増えやすいこと
  2. わずか♀一匹でも新しい生息場所を開拓できること
  3. 多くの植物種を加害する(食わず嫌いが少ない)こと
  4. 殺虫剤への抵抗性がすぐに発達すること

などです。

(1)は、増えて困るくらいなので、飼い易いことを意味します。これはとても大事なことです。何しろ飼えないために研究できない生物種はいくらでもあるのです。

(2)は、未交尾♀が半数体の息子を生み、成長した息子と老いた未交尾の母が交配して(ゲロゲロ)子孫を残せるからです。これだけ近親交配に強いと交配実験をするのにとても便利です。

(3)も、草食動物では極めて珍しいことで、食草を取り替える実験が可能になります。

(4)は、世代時間が短くて進化が速いためです。ハダニの世代時間はわずか10日、ハダニの1年は人間の千年なのです! だから小進化の過程を実証することだって簡単です。

さらに,ハダニのふだんの行動範囲は1枚の葉の上です。だから、実験室のシャーレの上でハダニの行動を観察するのはそれほど不自然なことではありません。ゾウやシマウマが材料だったら、行動を観察するためにサファリパークを造らないといけません! また、ハダニについて何かを知りたい時は、文献を探すよりもハダニに聞く(=データをとる)方が早いこともあるほどです。ハダニがどれだけ便利な材料なのか、おわかりいただけましたか?

私たちはこのように、ハダニを実験動物として使い、普遍的なテーマを研究しています。研究室のメンバーの多くは、材料主義の学会(日本ダニ学会、日本応用動物昆虫学会など)とテーマ主義の学会(個体群生態学会、動物行動学会、日本遺伝学会など)の2つの座標軸を持つことによって、研究者としての視野を拡げています。